撮影で得た学びと気付き
ウエディング撮影の現場は、ただの撮影現場ではない。
そこには人生の節目を迎える人々の喜び、緊張、涙、そして愛が渦巻いている。私はこの現場に立つたびにフォトグラファーである前に「人」としての感性を問われているような気がする。
最初の頃、私は「完璧な構図」「美しいライティング」「技術的に優れた写真」を追い求めていた。もちろん、それらはプロとして当然の責務だ。
しかし、ある日、控室で花嫁が母親と静かに手を握り合っていた瞬間を目にしたとき、私はシャッターを切ることを一瞬ためらった。そこには、言葉では表現できない深い感情が流れていた。私はその空気を壊さぬよう、そっと距離を取りながら、静かにその瞬間を切り取った。
その写真は、後日、新婦から「一番心に残った一枚」と言われた。技術的には決して完璧ではない。光も弱く、構図も少し崩れていたかもしれない。でも、そこには「感情」が写っていた。私はそのとき初めて、「写真は記録ではなく、記憶を残すもの」だと実感した。
また、現場では予期せぬトラブルも多い。雨が降る、機材が不調になる、進行が大幅に遅れる。そんなとき、パニックにならず冷静に状況を見極め、柔軟に対応する力が求められる。ある結婚式では突然の雷雨で屋外撮影が中止になった。新郎新婦は落胆していたが私は即座に館内の階段ホールを使って逆光を活かしたドラマチックなポートレートを提案した。結果的にそれが「まるで映画のワンシーンのよう」と喜ばれた。
このような経験を重ねる中で、私は「技術」と「感性」、そして「人間力」のバランスがいかに大切かを学んだ。ウェディングフォトグラファーは、ただの記録者ではない。時に演出家であり、時に空気を読む観察者であり、そして何より、人生の一瞬を預かる「証人」なのだ。
現場での学びは、マニュアルには載っていない。人の表情の変化、空気の揺らぎ、家族の絆、そういった目に見えないものを感じ取り、形にする力。それが、私がこの仕事を通して得た、何よりの「勉強値」だと思っている。