和やかなおふたり
ある日のブライダル撮影でのことでした。季節は春。
桜が咲きはじめた頃、新郎新婦のおふたりは小さな神社での前撮りを希望されていました。彼らが初めて出会ったのも、この神社の境内だったそうで、その思い出の場所で写真を残したいという願いに、私も心を込めて応えたいと思ったのです。
撮影当日、風は少し冷たかったものの、穏やかな日差しがふたりを優しく包み、舞い散る桜の花びらが時折ふんわりと画角を飾ってくれました。ポーズをお願いすると新郎がふいに「この木の下で初めて話したんだよね」と呟き、新婦がうなずいて微笑みました。
その瞬間を逃さずシャッターを切ったとき、写真にはふたりの記憶と、今この時の幸せが、まるで重なり合うように写っていました。
その後も撮影は和やかに進み、最後に神社の鳥居の前で一枚。ふたりが手を取り合い、見つめ合う姿をファインダー越しに見ながら、私はふと思いました。
「写真は、未来のふたりへの贈り物なんだ」と。
この撮影を終えて、新郎新婦が私に言ってくれたひとことが忘れられません。
「写真って、気持ちも写るんですね」
この言葉を胸に、私はこれからも、ふたりの人生の節目を優しく彩る写真を撮っていきたいと思います。